大賞
地産地消文化情報誌「能登」
[石川県]

今年の正月に起きた能登半島地震。なかなか復興が進まないなかで編集長である私が住職を務める寺も崩壊し、 再建はしないことに決めました。一方、まわりの方々から能登編集部に心配の声や応援メッセージがたくさん寄 せられ、雑誌の方は継続することを決心しました。復興記念号は、この能登半島地震の記録をしっかりと記憶に とどめ、今後の災害防止に役立てたいとジャーナル的な視点での大特集といたしました。 石川県はかつて北部の半島エリアの「能登國」と、南部の「加賀國」に分かれていました。能登國の歴史は加賀 國よりも古く、今から約1300年前に独立した歴史を有します。2010年秋、独自の歴史や民俗、文化が今 も色濃く残る能登の魅力を、人や食、歴史や文化などを通して、能登の内外に伝えることで、一人でも多くの人 に能登を訪れてもらいたい、そんな願いを込めて創刊しました。今年夏号では、近年目立つ能登への移住者(Iタ ーン・Uターン)を特集。移住者たちには、従来から能登に住む人たちの常識では考えられない発想や価値観があ り、その暮らしぶりや考え方から何か大切なヒントを得ることができるように感じます。特集では彼らを通し て、高齢化と人口減少に悩む能登の、これからの可能性を探りました。
審査コメント
地元で脱サラ後にお寺の住職となり、新聞社でのサラリーマン時代のノウハウを活かして本誌を2010年に企画創刊。 創刊以来季刊誌として継続して発行。 特集、連載記事共にクオリティの高いコンテンツで読み応え十分。特に写真のレベル、写真の見せ方に優れている点を高く評価して、2023年の本アワードで特集「能登に泊まろう!」で隈研吾特別賞を受賞した。 その能登は、年明け元旦に発生した能登半島地震により街の至る所で大災害の被害を受けた。雑誌「能登」の経塚編集長が住職を勤めるお寺も半壊し、再興はしないという。そんな失意の中、地元をはじめ多くの読者の皆さんから雑誌発行に対する応援メッセージが沢山届き、震災後に発行した号の特集は「能登半島地震」。審査員の皆さんからは、雑誌ならではのカラー写真をフル活用した紙面から、震災の悲惨な様子が手に取るように、直感的に読み取れるとのコメントが多かった。また、記録性があり保存すべき1冊であるとの高い評価で2024の大賞を受賞。
受賞の喜びの声
このたび「大賞」という最高の賞をいただき、誠にありがとうございます。2010年の創刊以来、一人出版社として年4回、能登に特化した情報誌をコツコツと編集・発行してきた努力が報われたことと、本当にうれしく思っております。令和6年1月1日の能登半島地震で一時は発行を1~2年休むことになるかも、という思いが頭をよぎりましたが、読者や支援者から「こんな時にこそ能登の情報誌が必要だ」との声に背中を押され、5月に「地震特集」というこれまで経験したことのない情報誌を発行いたしました。毎日が苦しい日々でしたが、苦労して編集した甲斐があり、大きな反響・好評を得て、創刊以来初めての「増刷」という経験もできました。また、JNSCA(日本地域コンテンツ振興協会)がプレミアム協賛された東京国際映画祭のイタリア大使館でのパーティに招待いただき、神原理事長から株式会社ファーストリテイリング 取締役 グループ上席執行役員 柳井 康治様をご紹介いただきました。能登への労いの言葉をいただく等大変嬉しい出逢いをいただき感謝しています。この栄誉ある受賞を機に、新年から全国各地にある魅力的な地域コンテンツ制作に携わっている方々を紹介するシリーズ企画を弊誌で展開することを考えています。今後、ますます地域コンテンツの重要性が増してくると予感しています。