2017大賞(2誌)

gatta! (山形県/無料)


生まれ育った街を、素直に好きって言える。これって、素敵なことだと思いませんか?ここ山形には、全国的かつ世界的に見て決してひけをとらない、稀有な文化や素晴らしい風土、類い稀なる才能を持った人物が数多く存在します。しかし、実際ここで生活している方の多数はそのような優れた面を知らず、或いは知ろうとせず「山形=田舎=格好悪い」という短絡的な先入観から、山形という土地に対して否定的な見識を持っているという事実があることは否めません。誇りながらも消え去ろうとしている山形の文化や伝統を積極的に取り上げていくことはもちろん、普段の生活が大幅に変貌しないまでも、ほんの少し個々の山形を想う気持ちが変わり、もっとこの街が住みやすい場所となるため、親から子へ正しいことを伝えるために、そして何よりも“自分の故郷を誇りに思える”気持ちを育てるということが「gatta!」最大のテーマです。
審査コメント
大きなスイカを美味しそうに頬張る2人の子ども。夏らしくてインパクトのあるかわいい表紙に、審査員一同思わずニンマリ。「生まれた街を、素直に好きと言える。とても素敵なことだと思いませんか?」という編集コンセプトで13年前に創刊された。この編集部からのメッセージ通り、地域の様々な魅力を、企画、写真、文章、デザイン等、高いクオリティで編集してある点が高く評価されての受賞。この街に住んでいる読者にとっては、「わが街再発見」のきっかけとなり、観光客にとっては、ディープな観光情報満載の雑誌となっている。
誌面からWEBに動線はあるが、PDFになっており、知りたい情報が検索できないのが非常に残念な点である。13年分の「gatta!」を再編集すれば、山形の新しい魅力再発見のコンテンツになるだろうと思われる。
受賞の喜びの声
この度は栄えある「大賞」を頂き誠にありがとうございます。これもひとえに13年という長きに渡り「gatta!」を支えていただきました数多くのスポンサー様を始め読者の皆様のおかげと深く感謝の意を表し厚く御礼申し上げます。この「大賞」受賞で我々スタッフ一同もさらに自信とやる気に満ち溢れているところですが、その反面大きな責任とプレッシャーを感じているところでもあります。今後はアドバイスも頂きました、誌面とウェブの連携をさらに充実していき、今まで以上に楽しく読んでいただける誌面作りを心掛けてまいります。ありがとうございました。(ガッタハウス室長 柿崎 隆治)

ぎょぶる (福岡県/有料)


発行元の魚部(ぎょぶ)は自然や生物に関心のある「全国だれでも参加できる場」。研究者や写真家、農・漁業等の多分野の専門家と愛好家が全国31都道府県・約320名集い、人物多様性がすごぶる高い。この多様性をベースに私たちの暮らす場の生物の多様さ、そして多様性の大切さを伝える様々な取組の一つが雑誌ぎょぶる。お任せエッセイと巻頭特集を柱に「世間へのメッセージ」となるものを目指す。エッセイは各専門家が、関わる自然を個々の視点で語る。巻頭特集は編集部が調査・取材した日本のどこかを「魚部的視点」と題して取り上げる。観光ガイドではなく、地元が知らない内容も満載。これらを通じて、世間の自然や生物へのまなざしを豊かにしたい。4号は池間島と宮古島の湧水を特集。池間島にある元は海だった沖縄県最大の淡水湿地イーヌブーを島の子どもと探索、宮古島の隠れた大自然「湧水」の世界を専門的、かつ編集部体当たりで調査という2大特集。
審査コメント
1周年記念号にあたる巻頭特集は、沖縄県宮古島市を訪れて「ぎょぶる」編集部ならではの切り口で徹底取材。カラフルなイラストを活用した表紙のイメージとは打って変わって、誌面にはリアルな水生昆虫の写真がこれでもかとばかりに掲載されている。 取り上げられている情報は多面的であり、徹底的に深堀されているので読み応え十分。専門的なオタク情報を一般の人にも読みやすく、かつ面白く編集されている点が高く評価されての大賞受賞である。 当編集部は、1998年に福岡県立北九州高校の「魚部」にかかわった人を中心に2015年に、誰もが参加できる「市民の部活」的な集まりに発展。
受賞の喜びの声
「大賞はぎょぶるです!」という発表の瞬間、頭が真っ白になりました。初参加で会場に来て多くの素晴らしい雑誌、創る人びとの思いや工夫、苦労を聞いていたので、まさか!という驚きがどんな感情よりもまず先にやってきたのです。壇上で徐々に喜びやこれまでの出来事、特に創刊前後のことが一気に思い出されました。「生きものや自然、自然と人間のかかわりを発信」をテーマに「自分が読みたくなる、欲しくなる、ワクワクする」かつ「世間に存在しない」、同時に「あると何か世の中が楽しい、あることで少し何かの役に立つかもしれない」雑誌。そんなのを創ろうとしてきました。私たちは雑誌つくり自体が生業でも本業でもなく、その点ではただの素人です。でも、私たちならではのアプローチや手法で「おもろいもの」ができるかもしれないと取り組んできました。今回、まさに「玄人」の皆様に身に余る評価をいただきました。今後ますます励んでまいります。ありがとうございました。(北九州・魚部代表 ぎょぶる編集長 井上大輔)